地域情報化:地域における情報分野で自治体が担うべき役割は何か(2)

前回の記事「地域情報化:地域における情報分野で自治体が担うべき役割は何か(1)」の続きです。
少し間が空いてしまいましたが、前回は電子申請が普及しない要因の一つとして「申請手続きに関する情報提供」の不足があることを解説しました。
さて、申請者の立場に戻りましょう。
「私が申請者ならこのような情報不足の場合、どうするか」を考えてみました。(思考実験ってやつです)
私なら、とりあえずググって(ネットで検索して)みるでしょうね。
これは冗談ではありません。以前私が電子申請システムの利用低迷の原因を研究したときに、未知の申請手続きの課題を与えて、どういう行動を取るのかという実験をやってみたのです。
未知の申請手続きに対して、申請者が挑む初期の行動として、ネットで検索するケースが散見されています。実験の結果とそこからの考察は、海外の学会に論文として発表しています。

Development of Knowledge Model for Administrative Procedures based on behavioural trait analysis: the case of Japan
International Journal of Electronic Governance(IJEG), Volume 2 – Issue 2/3 – 2009, pp.192-209
http://www.inderscience.com/info/inarticle.php?artid=29129

さて、素直に検索してみたとしましょう。
出てくるのは行政書士のWebページばっかりです。事務所の地域はまちまちですが、どれも似たような内容です。
ひと通りの手続の概要が示されていて、多少親切なサイトだと申請書の記載事例なんかも載っていて、でも肝心のポイントがなぜかぼやけていて、手続を代行するならいくらかかります、相談はこちらのアドレスまで、という流れで顧客を誘導しています。
(実を言うと、行政書士のWebページのスタンダードを作ったのは、この私です。行政書士の世界で最も初期に事務所のWebサイトを立ち上げて、その時点ですでに申請手続きの解説と申請書類の記載例を掲載していました)

1996年12月の時点の私の事務所のWebサイトの記録(Internet Archives)
http://web.archive.org/web/19961218221038/http://www.kawaguchi.com/

一方、ここで気になるのが、「行政機関のWebページはなかなか出てこない」という事実です。
行政機関では手続に関する情報の公開が十分ではないことは、予想されていたと思いますが、皮肉にも行政書士のWebサイトがこの状況を補完することとなっているようです。
まぁ以前よりも役所のWebサイトはずいぶん良くなった、との声もありますが、相変わらず行政機関のスタンスは、
「こういう法令に基づく、こういう許認可申請を行う場合には、このような書類を作成して申請する」
という内容の説明です。法令が起点なのです。
仕方ないことなのかもしれませんが、申請者自身のモヤモヤがどういう法令の手続に該当するかということについての答えを用意しているわけではないんですね。
電子政府の総合窓口(e-Gov)というサイトがありまして、ケース毎に必要な手続が何かを解説している事例もあるのですが、掲載されているケースが非常に少なく、使い勝手が悪い(満足感が得られない)のです。
市町村のWebサイトでは、「引越ししたら」とか「子供が生まれたら」などのライフイベントによる手続の情報提供を行っているところが増えています。モヤモヤの一部は解消できるかもしれませんが、満足感が得られるかどうかは私にはわかりません。
私は研究者ですので、理屈っぽく類型化して考えてしまいがちです。「満足感が得られる情報の量と質」ということに関心があります。
思いつきですが、閲覧することで欲しい情報に「必ず」たどり着くことが大切なのではないかと思います。(必ず、というと要求が高いようですが、フィットしたと思う割合が相応に高い=満足感を得られる閾値みたいなのがあると考えます)
これが「満足感が得られる情報の質」です。
あるいはキーワード検索を用いる場合でも、単にキーワードの一致でページを拾うのではなく、自然文(普通の書き言葉、話し言葉)を受け付けたり、「見つかりませんでした」という検索結果が極力存在しなくなるような仕組みづくりも満足度を高めるのではないでしょうか。
自治体に限らず、小規模のWebサイトでキーワード検索を提供しているところがありますが、利用してて一番がっかりするのが、検索結果で「該当なし」と出ることです。(そう思いません?)
検索というインターフェースが活きるのは、圧倒的に大量のデータを有している場合でしょうね。「満足感が得られる情報の量」も大切なのです。
話が脱線しまくりで、申し訳ないです。ちょっと軌道修正しましょう。