地域情報化:低迷続きの電子申請分野に潜む本当の課題は何か(2)

前回の記事「地域情報化:低迷続きの電子申請分野に潜む本当の課題は何か(1)」の続きです。
前回は電子申請分野における、これまでの研究のアプローチについて簡単に示しました。今回以降は私の考えを書いておきます。
私の考えはこれまでの国やそれを取り巻く環境(ちょっとぼやかしてますが、電子政府に関する政策にコミットできるすべての人々や学術分野の方々を指してます)とは少し違います。
そもそも電子政府を目指す動機が不純ではありませんか?
電子政府推進に関する研究の冒頭では、必ずと言っていいほど、世界の電子政府ランキングなる順位が引き合いに出されます。
調査機関や時期などによっても上下するのですが、お決まりのシナリオは、

”国別のランキングを見ると、韓国、シンガポール、北欧の国々の順位
が高い。一方、わが国はこれらの国々と比較して遅れをとっている。

そこで、わが国も負けないように世界に誇れる電子政府を目指そう。

そのために君たち自治体も頑張れよ。”

というものです。
一見もっともらしいのですが、二つの見落としがあります。

  1. 地方公共団体は国のサブセットではない
  2. 電子政府ランキングと住民生活レベルに直接的な関連はない

政府はその立場から、国際競争力を意識した施策を選ぶのはある意味仕方がないのかもしれません。しかし、地域住民は電子政府(とそれに派生する電子自治体)の推進を特に望んでいるわけではないのです。正確には実感が伴わない施策に対して特に関心がないのでしょうね。
地方公共団体にしてみれば、地域住民にメリットを示せない施策を国の誇りのためだけに押し付けられていると受け取ってしまってもおかしくありません。
前述の電子申請システムが電子政府、電子自治体の一部を構成しているとすると、電子政府を構成している他の要素は何でしょうか。
e-Japan計画を始めとする国の計画では、大きく分けて、医療、福祉、教育、雇用、産業育成などが含まれています。ただ、これらは電子申請に比べると、官民協同の意味合いが強く、行政側で主体的な方針を打ち出しにくい状況にありました。
結果、具体的な施策を検討するよりも、将来に備えて、まずは情報通信基盤の整備を進めることが主だった取り組みとされています。
ちなみに、平成23年の時点で通信基盤の整備はおおむね完了しています。基盤整備という話題を耳にすることも減りました。広い意味で携帯電話の電波が届かない、地上波デジタル放送が見られない、などの話題も含めてです。
これ自体は大変よい話なのですが、今後はいよいよ、先送りにしてきた問題をどのように解決していくかが主たるテーマになろうかと思います。
そこで、私が考える電子政府の推進に関する取り組みについて、まず電子申請(正確には電子的な行政手続き)についての考えを示し、次回以降にはさらに他のテーマに共通な事項について考えを進めていくことにしましょう。