前回の記事「積算と見積精査:行政機関の情報システム調達における積算業務は妥協の産物か(1)」の続きです。
架空の行政機関、自治市のお話です。
自治市に限らず、多くの地方公共団体では財政課の担当が情報技術に関する素養がない(とされている)ことから、情報政策関連の部門に事業委託経費の妥当性をチェックするよう依頼しており、この作業を「積算」と呼んでいるのでした。
しかしながら、自治市の場合には情報政策関連の部門と言えど、一般の行政職員が担当しますので、どうやって積算してよいのか、その方法論が確立されていませんでした。
だいたい、情報システムの開発や保守に携わったことのない人間が、システムの規模を把握しようとすること自体、無謀なのです。
そしてそんな状態のまま、行政機関の予算が形成されてしまうというのも問題です。とは言うものの、ノーアイディアのままでもいられません。
CIO補佐官を外部から求める際、期待されるミッションの一つに、積算に関する課題の解決というものが含まれています。そして、私自身CIO補佐官として赴任した当初は、この積算という珍妙な作業の果たす意義がどうしても理解できませんでした。
というのは、「積算」と名前はついていますが、実際には積算ではない作業を行っているからです。
積算の流れはおおむね次のとおりです。(情報システムを新規開発する場合)
もちろん行政機関によってローカルルールがあります。
1.情報システム開発のための企画を立案する。(原課)
2.企画に基づき、仕様書・システム設計書を作成する。(原課)
3.システム設計書をベンダーに示し、見積を取る。(原課)
4.見積を情報部門に渡し積算を依頼する。(原課)
5.見積内容を元に、作業項目や工数を精査する。(情報部門)
6.積算書面を作成し、原課に返す。(情報部門)
あ、原課というのは、住民課とか税務課とか、それぞれの仕事をする部署のことです。これも一般の人はわからないので補足しておきます。
ここで、お気づきになることはありませんか?
そうです。積算ではなく見積精査なのです。自治市に限らず、あちこちの地方公共団体は積算と言いつつも、見積精査の作業を行っています。
こうしないと、情報部門でもどこから手をつけていいのか判らないのです。ある意味、妥協の産物なのかもしれません。
積算と見積精査:行政機関の情報システム調達における積算業務は妥協の産物か(2)
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